総論
金融商品取引法は、金融商品市場が公正かつ円滑に機能するように規制し、投資家を保護するための法律です。本法律の理解を深めるために、以下の要素を説明します。
- 金融商品市場
- 金融商品取引法の対象取引
- 金融商品取引法の目的
- 金融商品取引法の構成
金融商品市場
金融商品市場とは、企業などが株式などの有価証券を発行してから投資家が購入するまでの過程と投資家同士で売買する過程をまとめた概念です。
金融商品市場は以下2つの市場が密接に結びついて成り立っています。この市場が公正かつ円滑に機能するように規制し、投資家の保護を図るのが金融商品取引法です。
▼発行市場
資金を調達したい企業や国などの団体が、株式や債権といった有価証券を発行して資金調達する場
▼流通市場
投資家が購入した有価証券を自由に換金できる場
金融商品取引法の対象取引
金融商品取引法の適用対象には有価証券取引の他に一部のデリバティブ取引と呼ばれる取引も含まれます。それぞれの取引について以下で詳しく説明します。
▼有価証券取引
有価証券にはさまざまな種類があります。金融商品取引法上では有価証券を以下の2つに区別して扱っています。
- 第一項有価証券:国債・地方債や社債、出資証券、株券など
- 第二項有価証券(みなし有価証券):信託の受益権など、証券などに表示される権利以外の権利
詳しくは以下表を参考にしてください。
▼デリバティブ取引
原資産と呼ばれる有価証券や通貨、預金などのリスク低減や収益性を追求するために考案された手法としてデリバティブ取引というものがあります。このデリバティブ取引の一部も本法律の対象です。対象となる取引は以下のとおりです。
- 市場デリバティブ取引:金融商品・金融指標の先物取引、オプション取引、スワップ取引など
- 店頭デリバティブ取引:金融商品市場によらないで行う市場デリバティブ取引と同様の取引
- 外国市場デリバティブ取引:外国金融商品市場で行う市場デリバティブ取引と類似の取引
金融商品取引法の目的
金融商品取引法では、法律の目的を以下のように定めています。
企業内容等の開示の制度を整備するとともに金融商品取引業を行う者に関し必要な事項を定め、金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により、有価証券の発行及び金融商品等の公正な価格形成等を図り、もって国民経済の健全な発展及び投資家の保護に関することを目的とする。
金融商品取引法の構成
金融商品取引法は大きく以下4つ内容で構成されています。
①情報開示(ディスクロージャー)
有価証券の募集や売り出しの際に必要になる有価証券届出書や事業年度ごとに行う有価証券報告書などの書類作成や開示に関して規定しています。また、株式公開買付制度や大量保有報告制度についても規定しています。
②資本市場の担い手に関する規制
金融商品取引業者や金融商品取引所など、市場機能の担い手としてのそれぞれの役割を明確にするための規定が定められています。
③取引の規制
不公正な取引などを禁止するため、金融商品取引業による取引や金融商品取引所における取引についての規定が定められています。
④金融行政に関する規制
②で定められている規制とは別に、証券取引等監視委員会の犯則事件の調査に関する制度や金融庁による課徴金の納付命令に関する制度が定められています。