経済
私たちの身の回りでは常に様々な経済活動が行われています。
このパートと次のパートでは、この経済を捉えるための指標について学んでいきましょう。
まずこのパートでは国の経済の調子を表すGDPと、国際収支について解説していきます。
GDP
GDPとは、国の総合的な経済活動を知ることのできる指標です。一国の景気を大まかにとらえる代表的な経済指標です。
GDPは生産(付加価値)、分配(所得)、支出の3つの側面を持っています。
GDPはこれら3つの側面は、どの側面から見ても等しくなります。
これを三面等価の原則と言います。
生産面のGDP
生産面から見たGDPは、ある一定期間内(1年or四半期)に国内全体で新たに生産された財やサービスの付加価値額を合計したものです。
付加価値額は以下の式で求めることができます。
最終的に消費される段階での額(産出額) - 材料として投入したもの(中間財)の額 = 付加価値額
例えば、小麦粉やバター500円分を材料に1200円のパンを生産した場合、1200-500=700円
が付加価値額になります。
分配面のGDP
分配面から見たGDPは、以下の式から求めることができます。
雇用者報酬 + 営業余剰 + 固定資本減耗 + (間接税 - 補助金) = GDP
雇用者が得ている利益は雇用者報酬、企業が得ている利益は営業余剰と固定資産減耗、政府部門へと回収されたものは間接税としてすべて足し合わせます。逆に政府から提供された補助金はそこから引きます。
支出面のGDP
支出面から見たGDPは以下の式から求めることができます。
民間消費 + 民間投資 + 政府支出 + 輸出入 = GDP
名目GDPと実質GDP
GDPがただ額面通りの値段で増加しても、同時に物価が上昇していれば、経済活動水準が高くなったとは言えません。
これを考慮し、もとのGDPから物価上昇分を取り除いたものを実質GDPと呼びます。
実質GDPに対し、物価上昇を考慮しない元々のGDPを名目GDPと呼びます。
また、名目GDPを実質GDPで除したものをGDPデフレーターと呼びます。
名目GDPから実質GDPを算出する際に使用します。
よくニュースなどで見かける「経済成長率」は、実質GDPの伸びのことをいいます。
GDPは四半期ごとに発表され、前年同期比および前期比で比較されます。インフレ状態であれば名目GDPの方が高くなり、デフレ状態であれば実質GDPの方が高くなります。
GDPで見る世界経済の動向
GDPは世界の国々の経済状況を把握するための指標の一つです。
世界全体のGDPを見てみると、その約5割をG7諸国(米国、日本、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、カナダ)が占めています。
世界貿易の動向に、自分の国の経済がどの程度影響を受けるかもGDPから求めることができます。
これを貿易依存度といい、自国の貿易額(輸出 + 輸入)を名目GDPで除して求めます。貿易依存度が高ければ、自国の景気動向が世界貿易の状況に影響を受けやすいという事を意味します。
国際収支
国の居住者と非居住者の間の取引を対外経済取引と呼びます。財貨・サービス・所得の取引、対外資産・負債の増減に関する取引及び移転取引に分類できます。
国際収支統計
一定期間における一国のあらゆる対外的経済取引は国際収支統計によって記録されます。
国際収支統計は、①経常収支、②金融収支および③資本移転等収支の3項目から構成されています。
① 経常収支
経常収支は以下の三項目の合計です。一国の対外的な経済力を表します。
金融収支に計上される取引以外の居住者・非居住者間での債権・債務の移動を伴うすべての取引の収支状況を示します。
- 貿易・サービス収支
貿易収支は財貨の輸出入の収支を示す。財貨の輸出から輸入を差し引いたもの。
サービス収支はサービス取引(輸送・旅行・知的財産権等使用料など)の収支を示す。 - 第一次所得収支
対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示す。 - 第二次所得収支
対価を伴わない資産の提供に係る収支状況を示す。(無償資金協力、寄付など)
② 金融収支
金融収支は直接投資、証券投資、金融派生商品、その他投資及び外貨準備の合計です。
金融資産にかかる居住者と非居住者間の債権・債務を伴う取引の収支状況を示します。
③ 資本移転等収支
対価の受領を伴わない固定資産の提供、債務免除のほか、非生産・非金融資産の所得処分等の収支状況を示す。
▼ 経常収支と金融収支の関係
経常収支と金融収支の間では以下の式が成り立ちます。
経常収支 + 資本移転等収支 - 金融収支 + 誤差脱漏 = 0
この式に従えば、一般的には
- 経常収支が黒字の国は金融収支も黒字
- 経常収支が赤字の国は金融収支も赤字 となります。
外国為替
外国為替レートにおいて、ことなる通貨が交換される際の交換比率のことを為替レートと呼びます。
為替レートは基本的には1ドル=120円
といった表示方法で示されます。このように外国通貨の1単位を自国通貨で置き換える方法を邦貨建ての為替レートと言います。
為替レートの決定は、基本的に一般の商品価格と同じように外国通貨に対する需要と供給によって決まります。
ドル需要が発生するのは、日本が(通貨をドルとしている)外国から物品や金融商品を購入する場合です。ドルの供給が発生するのは外国が日本から物品や金融商品を購入する場合です。