ログイン

無料会員登録

財政

パート5

経済・金融・財政の常識

ダッシュボードへ

パート 5

経済・金融・財政の常識

ダッシュボードへ

財政

財政

政府の経済活動の事を指す「財政」ですが、これがいったいどのように運用されているか確認していきましょう。

予算

財政の運営は予算に従って行われます。
予算の決め方と、目的に応じた予算の種別を知りましょう。

予算編成

予算はまず内閣によって作成され、国会へ提出されます(内閣の予算提案権)。これを基に実際の予算案を財務大臣が編成し、国会による審議が行われます。
審議は衆議院で先に行われます。衆議院の議決の30日以内に参議院での議決が行われなかった場合、予算は自然成立します。

スライド1.JPG

このように決定された国の予算は、国が運用するための一般会計予算と特別会計予算、そして政府関係機関予算によって構成されています。
それぞれについて詳しく見てみましょう。

一般会計予算

通常、「予算」とは一般会計予算のことを指します。公共事業、社会保障、教育などの国の基本的な経費はこの予算から賄われます。
一般会計予算は成立時期や予算の追加により、さらに以下の三つに分類されます。

種類              説明
本予算 ある会計年度の予算として当初に成立したもの。
暫定予算 新年度になっても予算が成立しないときに執行される予算。必要経費だけを計上した暫定的なもので、本予算が成立した時点で効力を失う。尚、暫定予算による支出や債務の負担は本予算に基づくものとされる。
補正予算 予算成立後に新たに追加される予算。本予算と別に作成されるが、成立後は本予算と一本化する。

特別会計予算

特別会計予算とは、一般会計と区別して作成される予算です。以下のような場合に設けられます。

  • 国が特定の事業を行う場合
  • 特定の資金で運用する場合
  • その他特定の歳入で特定の歳出に充当し、一般会計と区別経理する必要がある場合

具体的には、東日本大震災の復興特別会計、年金特別会計、エネルギー対策特別会計などがあります。令和三年度現在、日本には13個の特別会計が運営されています。

政府関係機関予算

政府関係機関は、形式的には国と別の人格を持つ特殊法人(金融機関)であり、政府の全額支出により設立されています。この機関で執行される予算を政府関係機関予算と呼びます。
この金融機関は財政資金によって民間の金融活動を補完することを目的としています。貸付金の原資は一般会計からの出資や財政投融資資金からの借入金です。

財政の役割

財政の役割は以下の3つに分けられます。

                             説明
資源の効率的配分 民間が公共財を提供すると社会的に望ましい量が供給できない(※市場の失敗)。これを政府が提供することで是正する。
所得再配分 所得に対する累進的な課税を行い、ここでの徴税を別の個人に所得移転する。これによって所得分配を調整している。
経済安定化効果 税制による需要の操作で物価変動を抑制したり、完全雇用を推進することで経済の安定を図っている。

※市場の失敗…効率的な資源配分が達成されない状況のこと。(寡占・独占による価格つり上げ、情報の非対称性による不適当な取引価格など)

1 予算編成

2 予算の種類

政府支出

財政の歳出の内容について確認していきましょう。 歳出は大きく分けて、基礎的財政収支対象経費国債費の2つによって構成されます。

基礎的財政収支対象経費

基礎的財政収支対象経費とは、一般会計の歳出から、国債費を除いたものです。
内容を確認してみましょう。2020年度における歳出額の多い順に並べると、以下の通りです。

スライド2.JPG

① 社会保障関係費

国民が生活していくために必要な医療、年金、介護、生活保護、社会福祉などに使われる費用です。
急激な高齢化の進展を背景として、社会保障給付費が増加傾向にあります。

② 地方交付税交付金等

国が地方自治体に支出している交付金です。
地方自治体は地方税を徴収し、教育・警察・消防・環境衛生などの公共サービスを提供していますが、経済状況などによる各地方公共団体の財政力の違いが生じている場合、それを調整するために地方交付税交付金が支出されます。

③ 公共事業関係費

住宅対策や市街地、道路、港湾、上下水道などの整備、河川の堤防整備やダムの建設、農業の生産性の向上を目的とするかんがい排水事業などに使われる支出です。
その他にも地震や風水害などの災害が起こったときの復旧事業のためにも使われています。

④ 文教および科学振興費

教育環境の整備や科学技術の発展のために使われている費用です。
教科書の無償配付や全国学力調査の実施、国立大学法人・私立学校の助成、スポーツの振興といった教育振興助成費、公立学校の校舎改築などのための文教施設費などがあります。
その他にも経済的理由により修学に困難がある優れた学生などのための育英事業費、将来に渡る持続的な研究開発などの科学技術の振興を図るための科学技術振興費などもここに含まれます。

⑤ 防衛関係費

国の防衛力整備や自衛隊の維持運営のための経費のほか、基地周辺対策などに使われる費用です。
「国防費」の定義は様々ですが、日本の防衛関係費を国防費として見ると、G7諸国、オーストラリア及び韓国における対GDP比に比べて、日本の国防費の対GDP比は最も低くなっています。

国債費

国債費とは、過去に発行した国債の元利払いのための支出です。一般会計において、社会保障関係費に次いで大きい支出です。

租税と公債

財政の収入に当たる租税・公債について確認していきましょう。

租税

租税とは、法律に基づいて国(または地方公共団体)が国民(あるいは住民)から徴収する金銭の事です。
尚、「所得の多いものほど相対的に大きな負担をすべきであり(垂直的公平)、所得が等しいなら税負担も等しくなければならない(水平的公平)」という原則が一般に公平な税制と言われています。租税はこの原則に基づいて課せられています。

租税は国税と地方税、直接税と間接税、所得税と消費税と資産税等に分類されます。

公債

公債は国債と地方債を合わせた総称です。
原則として公債を発行することは財政法4条1項で禁止されていますが、同条1項の但書に公共事業等の特定の財源については公債の発行が認められています。 この但書に基づいて発行される国債は所謂建設国債であり、4条国債と呼ばれます。

                               内容
財政法第4条1項 国の歳出は公債・借入金以外の歳入を財源とすること
財政法第4条1項但書 例外として、公共事業金、出資金、貸付金の財源については、その範囲内で公債発行・借入金によって調達できる

建設国債以外にも合法的に発行される国債はあります。重要な二つを確認しておきましょう。

赤字国債

赤字国債とは、財政の赤字を補填するために発行される国債です。特例法を制定することで発行されます(特例国債とも呼ばれる)。

借換国債

借換国債とは、すでに発行された国債や償還額の一部を借り換えるために新規発行される国債です。この国債の発行によって債務残高が増えることは無いため、財政法第4条に抵触することはありません。
近年借換国債の発行は増加しています。

財政投融資

予算とは別で扱われる、財政投融資について確認しておきましょう。
財政投融資(財投)とは、政府が政府系金融機関などを通じて行う出資・融資のことです。主に国債の発行を財源としています。

かつては財投の肥大化から「第二の予算」と呼ばれていましたが、2001年以降は財政スリム化により縮小しています。

これは、政策的な必要性があるものの、民間では対応が難しい融資に対応するための仕組みです。
長期・固定・低利の資金供給や、大規模超長期プロジェクトなどを対象とすることが多いです。

3 歳出

財政の状態

政府の歳出が歳入を上回ることを、財政赤字と言います。

また、財政状態を表す指標として、「プライマリー・バランス(Primary Balance=基礎的財政収支)」があります。
プライマリーバランスとは、公債金収入(借金)以外の収入と、利払費及び債務償還費を除いた支出との収支の事です。

スライド3.JPG

プライマリー・バランスが均衡していれば、その年の国民生活に必要な財政支出と、その年の税負担がちょうど均衡するしていることになります。 現在、日本のプライマリー・バランスは大幅な赤字を継続しています。財政支出を税負担で賄えていない(公債費で補っている)という事が分かります。

国民負担率

国の財政が国民にどれほどの影響を与えているかを確認する指標として、国民負担率があります。
国民負担率とは、国民所得に対する租税+社会保障負担の比率であり、これは年々高まっています。

地方財政

ここまでは日本政府の運用している財政について説明しました。
ここからは、地方の公共団体へと目を向けてみましょう。

地方公共団体でも政府と同様に、一般会計予算特別予算区分して予算を決定します。
国の財政と異なってくるのは、歳入の部分です。

地方公共団体の歳入は主に以下から得ています。

  • 地方税
  • 地方贈与税
  • 地方特例交付金等
  • 国庫支出金
  • 地方債

4 用語確認