経済の見方
経済を分析するとき、経済の動きを経済成長と景気循環の二つに分ける必要があります。
例えばデフレが起こったとき、それは正常な景気循環の中にいるのか、それとも経済成長が止まってしまったことによる長期的なものなのかで意味が変わってきます。
景気循環とは、景気の良し悪しの周期的なサイクルを指します。
それに対して、経済成長は経済の規模の拡大の事を指します。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
経済成長
経済成長をもたらす要因は、以下の二つに分けることができます。
説明 | |
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供給要因 | 『企業が「モノ」を生産するために必要とする労働力、資本(設備)、原材料という生産要素』を手に入れることができる要因 |
需要要因 | 『企業が生産したものが売れること』の要因 |
特に、一国の経済の供給能力は労働力、資本ストック(資本量)、技術進歩の3つの要因から評価されます。
景気循環
景気循環は数字として、実際のGDPと潜在GDPの差(GDPギャップ)によって表されます。
潜在GDPとは、労働力や資本を平均的に利用した場合の生産水準の事です。
実際のGDPが需要に沿った生産消費の動きであることを念頭に置けば、実際のGDPを国内の需要、潜在GDPを国内の供給として読み替え、このGDPギャップを需要と供給の差として解釈することができます。
GDPギャップと景気については以下のことが言えます。
- GDPギャップがマイナス:供給過多のデフレ状態であり、不況
- GDPギャップがプラス:需要過多のインフレ状態であり、好況
景気の捉え方
景気循環は様々な要因によって起こり、要因によってその期間は変わってきます。代表的なものは以下の2つです。
説明 | |
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在庫循環 | キチンの波とも呼ばれます。生産者の在庫管理が主な要因となる、2~5年の景気循環のことを指します。 |
設備投資循環 | シュグラーの波とも呼ばれます。設備投資のサイクル、研究・開発費が主な要因となる、5年超えの景気循環のことを指します。 |
景気関連統計
景気を分析するために扱われている指標について確認していきましょう。
景気動向指数
内閣府は景気の動向を表す指標として、毎月以下の3種類の指数について公表しています。
説明 | 具体例 | |
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先行指数 | 景気に対して3~6カ月ほど先行すると考えられる11系列から得た指数 | 新設住宅着工床面積、東証株価指数、実質機械受注、鉱工業用生産財在庫率指数など |
一致指数 | 景気変動と同じ動きを示すと考えられる10系列から得た指数 | 鉱工業生産指数、鉱工業用生産財出荷指数、有効求人倍率、耐久消費財出荷指数、商業販売額など |
遅行指数 | 景気に対して遅行する9系列から作成した指数 | 法人税収入、完全失業率、常用雇用指数、家計消費支出、消費者物価指数など |
様々な経済指標
景気関連統計の具体例を見ていきましょう。
いくつかのジャンルに分けてその統計の傾向、あるいは具体例を確認しましょう。
消費関連統計
消費に関する指標で重要な5つの関係式を紹介しておきます。
日本経済における最終需要の中で民間最終消費の占める割合は約55%で、最終需要項目としては最大です。「消費」を見るうえで”民間の消費”に目を向けることが大切だということは意識しておきましょう。
そして、民間における消費支出を決定する重大な要因が所得の増減と消費性向の変化です。
これらを捉える指標が以下の①~⑤ですので、しっかり覚えておきましょう。
(補足)
②可処分所得:
所得から所得税や保険料などを差し引いたもの。つまり家計が自由に使うことのできる所得。
③消費性向:
可処分所得のうち実際に消費として支出される割合。”財布の紐の硬さ”とも喩えられている。
住宅関連統計
住宅関連統計として、民間住宅投資と新設住宅着工があります。
※民間住宅投資はGDP統計の中で統計される住宅投資に含まれます。
説明 | |
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民間住宅投資 | 居住用の建物を新築、増・改築するための資金。進捗に応じて計上される。 |
新設住宅着工 | 着工された新設住宅の数。着工に応じて計上される。 |
工事着工ベースの数字は工事進捗ベースの数字よりはやく、その戸数は景気の変動に先行して動く傾向があります。つまり、新設住宅着工は景気先行指標として利用されています。
住宅投資は民間消費と並んで家計部門の大きな役割を果たす項目です。住宅投資をするかどうか、あるいはどれくらいするかの決定要因としては、投資者の所得・住宅ローン金利・税制・住宅価格等が考えられます。
雇用関連統計
雇用関連統計として主なものは、完全失業率、有効求人倍率、労働生産性の3つです。
完全失業率
完全失業率は以下の式によって表されます。
完全失業率(%) = 完全失業者数 ÷ 労働力人口 × 100
先ほど景気動向指数を紹介しましたが、日本において不景気の場合、雇用者の解雇は最後に行われるため、完全失業率及び常用雇用指数は景気の動きに遅行して動く、遅行指数とされています。
有効求人倍率
有効求人倍率は以下の式によって表されます。
仕事を探している人1人あたりに対する仕事の数を示しています。
有効求人倍率(倍) = 有効求人数 ÷ 有効求職者数
有効求人倍率は、景気動向指数の一致指数の一つです。好況期に上昇し、不況時に低下する傾向があります。
この場合の「求職者」は公共職業安定所等に登録した人のみのため、この倍率は実際よりも大きな値が出る傾向があります。
1倍を上回るときは人手が見つからない企業が多く、逆に1倍を下回るときは仕事が見つからない人が多いことを表します。
労働生産性
労働生産性は以下の式によって表されます。
労働投入量1単位当たりの生産量です。
物価関連統計
物価関連統計のうち、重要なものを4つ紹介します。
① 企業物価指数(CGPI)
日本銀行が発表する、企業間で取引される財の価格の水準を指数で示したものです。
国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数及びこれら3つに調整を加えた参考指数があります。
日本は原材料の多くを輸入に頼っているため、国内にインフレ要因が無くても、海外の商品市状況や円相場の影響を受けてこの値は変動します。
② 消費者物価指数(CPI)
総務省が発表する、家計が購入する約600品目の価格を、品目の平均消費額で加重平均した指数です。
税や社会保険料などの非消費支出、土地や住宅等の価格は対象とされていません。そのため、税や社会保険料の額の増減、不動産価格の変動はこの値に影響がないことに注意しましょう。
③ 企業向けサービス価格指数(SPPI)
日本銀行が発表する、企業間サービスの価格を把握するための指数です。
CPIに対する先行指標となります。
④ GDPデフレーター
以下の式で表されます。
GDPデフレーター = 名目GDP / 実質GDP
GDPに計上されるすべての財・サービスを含むので、CPIよりも包括的な物価指標です。