消費者契約法
このパートでは、外務員が守らなければいけない法律のうち、消費者契約法について解説します。
消費者契約法とは
消費者契約法とは、消費者が事業者と契約をする際、持っている情報量や質、交渉力に格差があることから、消費者を保護し事業者による適正な勧誘などを働きかける法律です。
消費者を誤認させる行為や困惑させる行為が行われた場合、契約の取消しや不当な契約条項の無効等を規定しています。
契約の取消し
消費者契約法では、事業者から主に以下のような勧誘を受けた場合、消費者は契約の取消しができると定めています。
説明 | |
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重要事項の不実告知 | 重要事項について事実と異なることを言われ、その内容が事実であると誤認した |
不利益事実の不告知 | 利益になることを言われ、かつ不利益になることを故意に言われなかったため、不利益をなことがないと誤認した |
断定的判断の提供 | 将来における変動が不確実な事項について断定的判断を提供され、その内容が確実であると誤認した |
過量契約 | 事業者が消費者の契約する物品や権利について、分量が通常の量を著しく超えるものであることを知っていた |
不退去 | 事業者に対し退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず事業者が退去せず、困惑させた |
退去妨害 | 消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず消費者を退去させず、困惑させた |
不安を煽る告知 | 消費者に過大な不安があることを知りながら不安を煽る発言をし、裏付けとなる合理的な根拠がなく契約が必要と告げられた(就職セミナー商法等) |
行為の感情の不当な利用 | 消費者が社会的経験が乏しいことから事業者に対して好意を抱き、かつ事業者も消費者が好意を抱いているものと誤信していることを知りながら、契約をしなければ関係が破綻すると告げられた(デート商法等) |
判断力の低下の不当な利用 | 加齢や心身の故障により判断力が低下していることから、現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、不安を煽り、合理的な根拠がなく契約を結ばなければ現在の生活の維持が困難になると告げられた |
霊感等による知見を用いた告知 | 霊感等の実証することが困難な特別な能力により、不利益が生じると不安を煽り、契約を結ぶことで不利益が回避できると告げられた(霊感商法等) |
契約締結前に債務の内容を実施等 | 契約前に、事業者が消費者の契約締結に向けた活動を実施した場合、正当な理由がないにもかかわらずその活動を消費者のために実施した旨や実施により生じた損失を請求する旨を告げられた |
なお取消権を行使するにあたって、消費者は必ずしも裁判で主張する必要はなく、相手方に対して取り消す旨を意思表示することにより契約を取り消すことができます。
また、消費者が取消権を行使した場合、契約当初に遡って契約を無効にすることができます。
不当な契約条項の無効
消費者契約法では、消費者の利益を一方的に害する次のような内容の契約条項は無効にすることができます。
●事業者は責任を負わないとする条項
損害賠償責任の全部を免除する条項、事業者の故意又は重過失による場合に損害賠償責任の一部を免除する条項は無効
●消費者はどんな理由でもキャンセルできないとする条項
消費者の解除権を放棄させる条項は無効
●成年後見制度を利用すると契約が解除されてしまう条項
事業者に対し、消費者が後見開始等の審判を受けたことのみを理由とする解除権を付与する条項は無効
●平均的な損害の額を超えるキャンセル料条項
キャンセル料のうち、契約の解除に伴う平均的な損害額を超える部分や、遅延損害金につき年利14.6%を超える部分についての条項は無効
●消費者の利益を一方的に害する条項
任意規定の適用による場合と比べ消費者の権利を制限し又は義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効